2016年10月1日土曜日

防災における地形用語の重要性

日本地理学会災害対応委員会

 わが国では毎年のように各地で自然災害が発生しています。2011年の東日本大震災は私たちの記憶に強く残る大災害でした。その後も、御嶽山の噴火、伊豆大島や広島での土砂災害、口之永良部島の噴火、茨城県常総市を中心とする鬼怒川の水害、そして熊本地震といった、わたしたちの生命や生活に大きくかかわる自然災害が次々と発生しています。
 土砂災害、水害、火山災害、地震や津波災害など、多くの自然災害は災害が発生した場所の地形条件と密接な関係を持っており、また同時に、被害を受ける人々の生活の場所における地形とも密接に関係しています。身を守り、被害を軽減し、さらには未然に防ぐために、自然災害が発生する場所や生活の場における土地条件としての地形について日頃から理解を深めておくことこそが大切と考えます。
 ここでは最近発生した自然災害を例に、災害が発生した場所の地形とその特徴について説明します。

「防災における地形用語の重要性」統合版(PDF, 6MB)




【目次】
1. 地形名称を正しく使うことが防災の第一歩 (PDF, 0.2MB)
「地形」は単に土地の形というだけにあらず!地形名称を正しく使い、その生い立ちや土地条件を正しく理解しよう。それが防災への最短距離なのです。

2. 熊本地震における活断層と地震断層 (PDF, 0.2MB)
まちを襲う直下地震の脅威!・・これは足下の活断層が原因です。地表に延々と 現れる地震断層は活断層が動いた証拠。地震断層は地形を変化させ、痕跡が残ります。それを探して活断層地図が作られます。

3. 誤用が目立つ「自然堤防」 (PDF, 0.2MB)
自然堤防を「自然にできた」堤防と解すべからず!自然堤防は、堤防の役割を果たす自然地形のひとつに過ぎません。

4. 微高地すなわち自然堤防か? (PDF, 5MB)
クレバススプレー、寄州、中州、…実にバラエティ豊かな「河川がつくる自然の高まり」。地形名称が異なれば、その性格も全然違う!

5. 旧河道 –液状化が発生しやすい過去の河道跡−(PDF, 0.2MB)
液状化は場所を選ぶ!?土地条件としてリスキーな旧河道。軟弱地盤に隠されるかつての川の流れを想像できますか?

6. 押堀(おっぽり)と落堀(おとしぼり)(PDF, 0.2MB)
押堀とは、まさに一夜にしてできた大洪水の痕跡。排水路の意となる「落堀」とは区別しよう。

(コラム)鬼怒川の水害と地形条件(PDF, 2MB)